月額904万6千円の事業費はどこへ消えるのか

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何故保育士の待遇が変わらないのか

保育士月給手取り15万円

昨日の夕方、横浜市の認可保育所「寺谷にこにこ保育園」が閉園したというニュースを読んだ。昨年の春、園長を含め11人の保育士が退職したのが原因らしい。そこには、12時間無休で働きながらも、月給が手取り15万円の保育士のことが書かれていた。資本主義社会において、労働の対価はお金だ。重労働に対する見返りが余りにも少なければ、やる気も失せるというものだ。一番の被害者であるはなれ離れになってしまう子どもたちを思うと、なんともやるせない気持ちになる。

タイトルに戻るが、認可保育所には各自治体から補助金が出ているのだ。どれくらい出ているのか気になったので調べてみた。Googleで「保育園 開設 補助金」と検索すると、様々なコンサルティング会社のHPが出てきた。何々、”東京都を例にすると60人保育で毎月およそ700万円の補助金が運営会社に入る”と表に書いてある。その下にはご丁寧に、”しっかりとした経営プランのもと誠実な運営を行っていれば、よっぽどのことがない限り経営難に陥ることはないでしょう”と書いてある。さすがコンサルティング会社だ。経営を迷っている人々の背中を優しく押してあげているのであろう。

しかし、今回ニュースで見た「寺谷にこにこ保育園」は横浜市だ。補助金に大きな差があると、考察する意味がないので正確を期するため横浜市のHPを見てまわった。補助金の情報がどこかわからないので、市のコールセンターに電話して要件を伝えた。すると横浜市こども青少年局につないでくれた。電話がつながった。横浜市こども青少年局こども施設整備課のクボデラさんがとても丁寧に対応してくれた。

基本は60人保育で月額904万6千円

横浜市で認可保育所を開設する場合、子ども1人当たりに対しどれくらいの助成金が出るのかクボデラさんに聞いた。まず規模として、20人以上の児童を預からないと認可保育所は開けないこと。そして新規開設する多くは60人保育であることを教えてくれた。60人児童を預かる認可保育所の場合、横浜市から運営会社にいくら払われるのか聞いてみた。PCを使える環境だと伝えるとHPから案内してくれた。ちなみに、横浜市から認可保育所運営側に払われるお金は事業費と言うらしい。

横浜市60人保育の定員設定の例

さきほどクボデラさんに聞いた、60人のモデルケースには各年齢の人数も振り分けられていた。それは以下の通りだ。

0歳…3人

1歳…8人

2歳…10人

3歳…13人

4歳…13人

5歳…13人

保育士の配置基準は、国の「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」 によって定められている。これを下回ることは許されない。この基準によると、

0歳…概ね3人に保育士1人

1、2歳…概ね6人に保育士1人

3歳…概ね20人に保育士1人

4、5歳…概ね30人に保育士1人

となっている。この基準を上記横浜市のモデルケースに当てはめると、最小限の人数だと保育士が日に6人必要となる。シフトや安定した運営を考えると、16人は保育士を確保したいところ。そのうち何人が正規待遇なのだろうか。

横浜市の認可保育所に払われる事業費

話を戻して、認可保育所に支払われる事業費のこと。

横浜市HP

横浜市HPのTOPから大きな写真の下の”事業者向け情報”をクリック

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子育てと出てくるので1番上の”認可保育所等の整備”をクリック

【新着情報】平成32年4月開所 内装整備費補助事業(二次募集)

最後の内装整備費補助事業というのはPDFファイルになっている。ファイルの27Pにお目当てのものが載っていた。すると、驚きの数字が目に飛び込んできた!!60人保育だと毎月904万6千円の事業費を貰えるらしい(目安と言っていたが)。死にたいくらいに憧れた、花の都大東京より200万円も多いじゃないですか!!年間にすると1億855万2千円もの事業費が、横浜市から運営会社に払われる想定なのである。

モデルケースの60人保育だと、2階建ての保育所で運営しているところも多く、延べ床面積500㎡の箱が想定されると教えてくれた。園庭が外になるのか、建物の屋上になるのかでも維持費が違うとも言っていた。ほかの資料が置いてある場所を聞き、お礼を言って電話を切った。クボデラさん、ありがとうございました。電話を切って他の資料を見ていると、保育所の重点整備地域や整備が必要な地域に指定されている場所だと、さらに手厚い補助が行われていることもわかった。

そして、冒頭の「寺谷にこにこ保育園」があった鶴見区寺谷二丁目は、整備が必要な地域に指定されていた。この地域だと建物を賃貸する場合5年間、賃借料の補助が出るのだ。「寺谷にこにこ保育園」は鶴見駅からほど近いマンションの1階で運営されていた。賃貸だとしたら、それなりの補助が5年間は出ていたと思うのだが。

整備が必要な地域に指定されていた「寺谷にこにこ保育園」はなぜ、保育士に相応の報酬を払うことが出来なかったのだろうか。待遇改善がなされないがために、大量の職員が離職することになり、結局利用者である子どもたちが被害を被ったではないか。保育所設立時の気持ちを思い出してほしい。全国で保育士の待遇が悪いというニュースをよく耳にする。自治体からの補助金が足りないのか、運営側の上層部が暴利をむさぼっているのか。真実はなんなのだろうか。不遇な扱いを受けている保育士の待遇改善を願うばかりだ。

コメント

  1. hun より:

    丁寧な取材に感服です。

    そこまでして給料をあげない?あげられない?理由は何なんでしょうね。
    保育園運営は奥が深いのか、ただただ補助金を独り占めしているだけなのか。

    • さんはん より:

      ありがとうございます。

      何なのでしょうかね。
      補助金も適切に使われているか、
      チェックしてほしいですよね。
      何が適切かってのを決めるのが難しそうですが。

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