僕は家で眠りたくなかった
どこか知らない場所に行きながら眠りたかった
その寝台列車には片足の無い犬と
目の見えないアヒル
エラ呼吸のできない鯉が乗っていた
犬は僕の足を見て言う
何をそんなに急いでいるの
アヒルは僕を探そうともせずに言う
見えている事ばかり信じたら駄目だよ
鯉はキセルをふかしながら言う
生き苦しいだろうそんなに考え込んでばかりでは
僕は急いでもいない
僕は見える事なんて何もない
僕は考えてなんていない
言われた事を全て否定したら何にも残らなかった
操り人形みたいに目をクルクルさせた
静かに目を開けたら窓が少し開いていた
目をやると婆さんがこちらを見てニヤニヤしていた
一度目を閉じてみる
婆さんは僕の目の前にいた
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