蹴とばした石ころが
花壇にあたって割れた
綺麗な色した花たちの
隣で割れた
それを見ていた奥様は
花を気づかい水をやる
石ころを踏んでいることも
気づかず水をやる
翌朝通りすがりの医者に
綺麗な色した花ですねと言われ
気をよくした奥様は微笑んで
手塩にかけましたからと
高笑い
君の価値観なんてものは
とうてい僕にはわからないだろう
僕が大切に育てていた
アサガオの植木鉢を
割ったやつはいるはずなのに
いつもと変わらぬ朝礼
陽が沈んだら帰りなさいと
幼き日の思い出が
甦ることもあるだろうよ
そんな所に座っていたら
鉄塔に座り眺める景色は
奥様が見ていたものと
なんら変わることはないだろうよ
まったく不思議なことに
翌朝通りすがりの政治家に
「坊やはそこで何をしているの」と聞かれ
母ちゃんの帰りを待っているだけですよと
僕が言うと政治家は
苦笑い
明日も僕は道端の
石ころを脇道へやるでしょう
あまり目立つ場所にあると
人々に蹴られるから
明日も僕は道端の
石ころを脇道へやるでしょう
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