ブランコ川

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一本の川が目の前にある 
ちょうど向こう岸までは飛べるか飛べないかの距離 
僕を後ろから追ってきている追っ手や 
向こう岸で待っている人もいないけど 
ここからは引き返せないし 
進み続けなければいけない

チャンナムとマンネは可愛がられる
遠目に眺めながらキン消しで遊ぶ
幼い頃は気に入ったブランコを見つけると 
友達の輪にも進んで加わっていった 
自分の影を踏むために十字路の真ん中で目を閉じて
まったく見えない人と話をする事もあったんだ 

羊飼いの少年は僕の目を見て 
遠くを見た後にゴルゴダで昼寝をしていた 
先生に笑いながらぶたれる事もあったけど 
僕はいつだって喧騒の中で生きてきた 
悲しい気持ちになる時は 
象の鼻を一直線に滑り下りた 
瑞々しくも熟していない雑草のように 

背中を 
ポン 
と押されればとまる事なく歩けたものを 
心の奥底からの渇きは 
いずれ僕の心を満たすことも無く 
まるで最初から存在していなかったかのように 
ひっそりと影も残さずに潜るんだ 

次の三日月が来るその日まで 
彼らは地中や心底に潜るんだ
カッパドキアに隠れて暮らし
ラクに酔いしれ楽々皆で踊り明かす
朝を待たずに飛び出るリズムが
地上で破裂しては石となる

下がってみたり上がってみたり 
どこかで汽笛が鳴っている 
薄明りに煌めく獣の咆哮は 
僕にも届かないし 
あの子にも届かない 

休み時間には皆で昼ごはんを食べ 
下校時には小石をコロコロ転がしながら帰る 
日常がやがて僕の手元を離れ 
幻想と嵐の中で風を聴いていた 
懐かしさなんて微塵も感じなかった 
だけど何故だか涙が溢れては消え 
春の訪れと共に先祖の心に帰依するように 
柔らかいドラム缶の中をコロコロ転がっていた

一本の川が目の前にある 
沈めた小舟と財宝を隠した川が 
初恋の人との思い出を隠した川が 
僕を後ろから追ってきている追っ手や 
向こう岸で待っている人もいないけど 
いつだって旅立つ時は独りだったじゃないか 

誰にも見られずに笑えるし 
誰にも見られずに泣けるじゃないか 
一度目にして嫌だったものや 
もう二度と見なくていいものなんて 
目を見開いて見ようと思っても繭に包まれている

三日月の日がきたからって楽しみにしていた 
一ヶ月に一度だからって楽しみにしていた 
バザーもでるしアイスも売っている 
気分が高鳴るのはいつだってこんな日なんだって 
ペテロが言っていたのを思い出した 

ラジオ体操広場に咲いた向日葵が
僕に後ろからそっと囁いてくる
一発ぶち込めばお釈迦だ
いつだって簡単に無くなる 

僕がこの川を渡りきる頃には
三日月は何回現れるだろう 
僕がこの川を渡りきる頃には 
何回ブランコを漕ぐんだろう

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